3分発表

短い発表ほど難しいといいます。自分のアイデアを凝縮させて、短時間のうちに相手に伝えなくてはならないからです。論文のタイトルを決めるのと似ているかもしれません。ぼくは論文を書くときは、イントロ → 自分の研究 → イントロ→ アブストラクト → タイトルの順番に書きます。書き間違えているって?いいえ、いつもこの順番です。最初にイントロを書くのは自分を論文書きモードにするためです。どうせあとで、スクラッチから書き直すので、このときは少々大袈裟でも景気のいいことを書きます。それから、自分のやったこと。ここは自分が一番よく理解しているところだから、書き易いです。そして、論文を書いた頭で、最初にいいかげんに書いた冗談のようなイントロをばっさりと削除して(もったいなければ、ブログにでも貼ってください)、書き直します。そしてアブストラクト、タイトルの順番です。タイトルとアブストラクトは投稿の寸前まで、修正の入るところです。タイトルの善し悪しで、よその人がぼくの論文を読むかどうかが決まります。お笑い芸人が、枕に気合いを入れるのと同じことです。*1タイトルが面白そうでも、アブストラクトが魅力的でなければ、その論文には「あとで読む」印をつけますが、よほどのことがない限りこういうのはスタックの底に埋もれる運命にあります。だからアブストラクトもがんばる。3分でアイデアを話すというのは、読んだひとを離さないようなアブストラクトを書くのと同じくらい難しいことです。

最初の例で Richard St. Johnが成功のための秘訣、あるいは$100万長者になる方法について話しています。

このプレゼンの特徴は、彼が紹介する8つのアイデアに対応した8つのアイコンが使われていることです。プレゼンをご覧いただければ分りますが、それらのアイコンの意味するところは明らかで、しかも、全体として一貫したデザインが使われています。

もちろん、プレゼンは見栄えだけではよいものを作ることはできません。内容がよく整理されていることが基本です。St. Johnの発表が秀逸なのは、アイデアを8つに絞り、それらを極短い、分りやすいキーワードに凝縮しているからです。お金持ちになりたい人はこのプレゼンから学んで下さい。

  1. Passion
  2. Work
  3. Good
  4. Focus
  5. Push
  6. Serve
  7. Idea
  8. Persist

あと、Garr はリモコンの利用が有効だと書いてますが、St. Johnはリモコンを使っていないようだけど。。を使えばもっといいと指摘しています。たしかに彼がPowerBookに目を落すとき、それまでの流れるようなトークが乱れる印象を受けました。プレゼンの完成度が上るにつれて、細かい所作が気になりますね。勉強になります。

ぼくは最近 BlueTooth マウス(AppleMighty Mouse)を使うようになり、プレゼンでも同じものを使います。パソコンまでの距離が離れている場合も移動しなくてすむのでとても便利です。プレゼンをするときだけポインタを大きなものに設定し、マウスで指示するようにしています。Mighty Mouse にレーザーポインタの機能がついていたらいうことはないのですが、とても便利です。いくらリモコンを使っていても、次にどんなスライドが表示されるのか頭にはいってなければ、意味がありません。頭にスライドを叩きこむことが基本ということです。

次の例ではDean Ornish博士は、世界に広まる米国流の食生活の悪弊を警告しています。

特に印象的だったのは地図のアニメーションを使って米国全体が年を追うごとに心臓病の問題に覆われてきた経過を示した点です。それは、恐しいスライドでした。そして、もうひとつ、人間の進化の果てはブタというジョーク。これは必見ですよ(滅茶苦茶早口ですけど)。

Garrは、プレゼンの先頭の方の箇条書きに注文を入れ、3つの項目がある箇条書きは3つのスライドに分割してはどうかと言っています。先日、紹介したLessig教授のプレゼンのようなものを勧めているようです。あの弾丸トークができるOrnish博士ですから、そういうスタイルに対応できるかもしれませんが、初心者は真似しない方がいいんじゃないかな。

二つのプレゼンを見て思ったのは、短い発表では話者は完全に話の内容を頭に叩き込んでおかなければならないという点です。どちらの発表を見てもわかるのですが、ちらりとでも迷う様子がありません。その様子から、聴衆は話者の自信を受け取るのでしょう。短い発表が続くときには、こういった印象を聴衆に植えつけることは重要だと思います。

*1:お笑い番組古典落語くらいしか見ないけど