S/N比と無駄

いつものようにGarr Reynoldsさんのブログを紹介します。今日、紹介されているのはUniversal Principles of DesignというReynoldsさんのお気に入りの本です。この本の内容は、副題がよくまとめているそうです:「分り易く、知覚に訴え、ぐっとアピールし、正しい判断を促し、デザインを通して伝える100の秘訣」それぞれの秘訣が見開き2ページずつで語られていて、図解されているのでとてもわかりやすいとのことです。

今回のブログのテーマのひとつであるS/N比(Signal-to-Noise ratio)は、ふつうは通信の分野で用いられますが、それを一般化して著者は「提示された情報のうち関連のあるものと無関係なものの比」としています。もちろん、プレゼンを用意する上では、S/N比を最大化する努力をしようというスローガンです。

ブログではSteve Ballmerのこんなスライドこんなスライドがけなされています。ありがちですね。このスライドを見ていうのではありませんが、世の中に安易に派手な視覚効果を使ったり、あまり効果的とは思えないアイコンを使う人がいます。ああいう技(?)もS/N比を悪化させているのでしょう。面白いのは普段はReynoldsさんも高く評価しているSteve Jobsのスライドを取り上げて無駄な3D効果や大理石調の装飾、ベースラインの欠如などについて批判しています。最近の高木さんの批判と同じ視点ですね。

過ぎたるは及ばざるがごとし

S/N比を向上させるためには、自分のメッセージについてよく考え、そのメッセージを支える要素のみを残し、ほかを除去することが大切です。たとえば、Reynoldsさんが作ったこのグラフの場合、非常に単純なデータを扱っているにも関わらず、読みづらいです。無意味な背景、異様に太いグラフの横線、誤解を与えやすい3D効果、肝心のデータが一番小さなフォントなどなどつっこみどころ満載です。高木さんではありませんが、グラフ表示の 3D 効果はいかなる場合においても利用してはいけないように思います。なぜって?棒グラフの分りやすさは数値データの大きさをアナログ的に表示している点にあります。アナログって分りますか?Analogy から派生した言葉で、要するに量の多寡を別な量の大きさで表したもののことですよ。たとえば、上の棒グラフの場合 20.0, 33,0, 50.0, 98.0 という数字の増加の具合をそれらのデータと比例する棒の長さで表しています。3D効果の変な遠近感のためにそれらの棒の真の長さを頭のなかで再構成しなくてはならないとしたら、なんのための棒グラフかわけがわかりません。時計の文字盤が9時と12時の間で広く、12時と5時の間が狭くて、午後になると針の進みが遅くなったら嫌ですよね、いろんな意味で?

ところでS/N比を重視して、メッセージに無関係な要素を排除したら無味乾燥なスライドになってしまうのではないかという心配もあるでしょう。図や表のような客観性が求められるデータについてはそうでもないかもしれませんが、感情に訴えかけたいような内容の場合には、あまりにも理知的なプレゼンは適切ではないかもしれません。"The laws of simplicity"の筆者のJohn Maedaは以下のように述べているそうです。

"When emotions are considered above everything else, don't be afraid to add more ornament of layers of meaning."